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「井上乃晏×ミュージアム」フラプリ2022インタビュー

プリンセスの制服は一旦脱ぎ、“普段の”格好の現役プリンセスとOGがざっくばらんに語らいます。

聞き手 兵庫県広報専門員 清水奈緒美
(フラワープリンセスひょうご2011)

この日、フラワープリセスひょうご2022の井上乃晏さんと私が訪れたのは、昨年にオープンした県立兵庫津ミュージアム。「兵庫県立美術館や市立博物館にはよく行くので、行ったところがないところへ」と井上さんたっての希望でこちらへ伺いました。

まずは、港としての兵庫津の歴史や兵庫県の成り立ちなどを「兵庫津ミュージアムひょうごはじまり館」でざっとお勉強。

続いて隣接の「兵庫津ミュージアム初代県庁館」へ。155年前の1868年、県としての「兵庫」が誕生した際、当時の役人や初代県知事が勤めていた建物を再現したのがこの初代県庁館です。「お白州」があったり「牢」があったりと時代劇さながらの雰囲気!

「ゆっくり見たいので、また来たいです!」と井上さん。こちらのミュージアムへの興味が高まったところで、腰を下ろしていろいろお話をしました。

 

ちょっと時間が足りませんでしたね

清水 じっくり見るには、ちょっと時間が足りませんでしたね。
井上 でも、すごくおもしろかったです。
清水 いつもはどんなジャンルの美術展へ行くんですか?
井上 モネとか印象派の絵画が好きですが、ジャンルは問わず見に行きます。行く前、事前にCiNiiとかで論文を読んで行ったりしています。こないだも、カップヌードルミュージアムに行く前、日清の創業者安藤百福について文献を読んで行きましたし…。
清水 えー!そうなんですね。まとめ記事とかネットで読む人はいると思いますけど、文献とは(笑)。
井上 あまり興味がない美術展にも行ったりするんですけど、その時は「楽しくないな」と思っても後々、「あの時の!」とつながることがあって。「アイノとアルヴァ 二人のアアルト展」へ行ったんですが、「椅子?」「よく分からん」と思っていたのに、別の展覧会(イッタラ展)でこのアアルト氏がデザイナーをしていたと分かった時に、「あぁ」ってつながって。「いろいろ行く意味ってあるんやな」と思いました。

 

企画をしたり、学んだことをアウトプットしたりする方が好きです

清水 これまでに、文化系ボランティアとかいろいろされているんですよね、井上さん。
井上 はい。大学1年生くらいまでは、東日本大震災で汚れてしまった文書をお掃除するボランティアをしていました。
清水 それは、どういうきっかけで?
井上 私の曽祖父が戦争へ行って亡くなっているんですが、祖母の家に当時の写真などが残っていたので、中学校の先生に相談したところ、「神戸大学で被災資料のクリーニング作業を行っている」と教えてもらって。関連のシンポジウムを聞きに行って、「やってみたいな」と保存活動に参加するようになりました。
清水 へぇ。戦争の資料の保存と震災関連資料の保存って、やり方は同じ…?
井上 汚れ方にもよりますが、流れは同じでしたね 。研究者でなくても高校生でもできる保存方法もあるので、家庭にある昔の資料や写真を保存することは大事だと思っています。
清水 なるほど。
井上 大学生になってからは、行政の市民委員みたいなこともしたことがありますし、イベントのボランティアスタッフをしたこともあります。
清水 そういうのは、「やってみたい」と思って応募するんですか?
井上 仕事をするようになったらなかなかできない経験だと思うので、学生のうちにやってみたいんです。私は、「イェーーイ」みたいな遊びができないタイプなので(笑)、そういうのよりは、学生団体で企画をしたり美術展へ行ったり、学んだことをアウトプットしたりする方が好きなんです。

 

広い兵庫県のことをもっと知りたい

清水 井上さんは、大学4回生なんですよね。大学ではどんなことを勉強されているんですか。
井上 アジア・太平洋の歴史や文化と、語学も少し学んで、グローバルな諸問題を解決できるよう複合的に考える力を養うという学科にいます。語学の専攻は中国語です。
清水 私も語学が専攻でしたが、私のところは逆に語学一本みたいな学科でしたね。
井上 へぇ!何語ですか!?
清水 ヒンディー語です。
井上 ヒンディー語ってことは、インドですか!すごい。文字は英語に近いんですか。
清水 いえいえ、全然ちがって、一本線を上に引く文字。見たことないですか?英語とのちがいは、英語が前置詞なのに対してヒンディー語は後置詞で…。って、こんなことはどうでもいいんですけど(笑)、なんでフラワープリンセスに応募しようと思ったんですか。
井上 正直なところ、「新しいことをやってみたい」という部分はありました。私は「将来は兵庫県で仕事をする」と決めていたんですが、でも、「兵庫県」と言っても広いですし、広い兵庫県のことを知らずに「兵庫県が好きです」って言うのもちがうかなぁと。フラワープリンセスの活動はきっといろいろなことを知れて、いろいろな人の話を聞けると思い応募しました。

フラワープリンセスひょうご2022最終審査発表会

 

いろいろな営みで兵庫県は成り立っているんだな

清水 プリンセスの活動をしてみてどうですか。
井上 生産者の方やいろいろな方とface to faceでお話を聞けるのがうれしいです。物産展へ行く出務では、「特産品を販売する方にお話を聞きたいな」とこっそりインタビューしたりして。周りの方が「休み時間くらいインタビューとかせずに休んだら?」って気遣ってくださるんですが、むしろしたいんです。
清水 分かりますー!!取材でしか人にインタビューってできないですもんね。
井上 はい。「在来種の種を継承するのが大事」とかなかなか聞けない話を聞くと、「目立ってフォーカスされるものだけではない、いろいろな営みで兵庫県は成り立っているんだな」と感じました。
清水 本当にそうですね。
井上 「親善大使には、自分が目立ちたいから応募したのかな」って思われていたら残念かなと。実際、出務でも「私がプリンセスです!」と前にぐいぐい出ることは少ないですし、私は花や緑を紹介する時には「生産者の想いも書いてこそではないのかな」と思っているので、そこは意識してInstagramの投稿をしています。

Instagram「flowerprincesshyogo_2022」投稿より

井上 もし、これから機会があるなら、私は新温泉町とか兵庫県の日本海側にも出務で行ってみたいです。

 

「軸はない」と思っていますが「視野を広げる」のは大事にしています

清水 素顔の井上さんは、どんな人ですか。
井上 中学生くらいまではすごく引っ込み思案でした。引っ込み思案だったり人見知りだったりするのが根っこにあって、先輩とか出会う人達に刺激を受けて「こんな風になりたいな」って挑戦をしている人ですかね、私は。その時々でお手本となる人を置いて。なので、「これ」といった軸はないのかなと自分では思っています。
清水 私も「この分野ではこういうことを大切にしていきたい」というのはありますけど、「軸」って言われると…ね。今は、「日本古来の美しいものとか食生活を大切にしたい」っていうのが軸っちゃ軸ですかね。
井上 へぇ。でも、「視野を広げる」のは大事にしています。なので、自分が関わったイベントに参加した人や、制作したドキュメンタリー映画を見た方から「視野が広がった」と言ってもらえるのは嬉しいです。
清水 ドキュメンタリー映画!?
井上 はい、映画といっても15~20分のものですが、学校の授業の一環で今年度、ドキュメンタリー映画を作って。
清水 すごーい。「ドキュメンタリーがおもしろいな」って思うようになったのは私、30代に入ってからですよ(笑)。井上さんの役割は、何だったんですか。
井上 最初は監督だったんですが、結局は撮影も構成も編集もしました。アポも自分で取って。教授のつながりでとある小学校を取材したんですが、その学校の先生を主人公に、生徒や生徒の親御さんに取材しました。

清水 やってみてどうでした?
井上 インタビューは、聞く内容を考えていかないと会話のキャッチボールはできないですが、でもそこに囚われ過ぎたら、「で、次は…」と続かないですし、「これは本来その人がしゃべりたいことなんだろうか」とか…いろいろ難しかったです。
清水 そうですよね、分かります。で、どういうものを伝える内容になりました?
井上 その小学校は、民族的なアイデンティティを尊重する教育内容が一つの特徴としてあったので、“伝えたいこと”は逆に明確に決めず、「まずその学校自体の存在を知ってもらうこと」をテーマに、日常を撮って、そこにいる動機や考えていることを聞き取りました。なるべくナレーションも入れず。歴史的な背景に触れると、別の解釈も生まれてくると思ったので、まずひとりの日常を描いて。
清水 すごいですね、それを大学生でするのが。
井上 歴史の知識がないままにジャッジはできないものですし、文献とか本を読んだりするだけで、「どうやこうや」と言うのは共生社会には遠のくのかなって。逆に取材者にフォーカスし過ぎて感情移入するのもちがいますが、でも「その人たちと直接会って話をして思う自分の感情も大切にした方がいいのかな」と思います。「どこまで中立にできるか」って難しいです。
清水 兵庫県にもたくさんの外国人、外国にルーツを持つ方が暮らしているので、そういうすぐに決めつけない姿勢はきっと必要ですね。