「藤井詩音×つづる」 フラプリ2022インタビュー
プリンセスの制服は一旦脱ぎ、“普段の”格好の現役プリンセスとOGがざっくばらんに語らいます。
聞き手 兵庫県広報専門員 清水奈緒美
(フラワープリンセスひょうご2011)
「万年筆で日記をつけるのが日課」という藤井さんと訪れたのは、北野工房のまち。元小学校の校舎を活用した施設で、神戸の食やショップ、工房などが集まっています。
この日は、「Kobe INK物語」のインクを調合して、オリジナル色のインクを作るというワークショップが期間限定で行われるというので参加しました。作る色は2種類。まずは、作りたい色を想定し、「Kobe INK物語」の中からベースとなる2色を選びます。
そして、そのベースの2色を「1:1」「2:1」「3:2」「2:3」と比率を変えて混ぜ、試し書きをする・・・。これを繰り返して、ほんのわずかにちがう色の中から「これだ」という配合を見つけていきます。
試し書きするペンの太さを変えたり、自然光、電灯と光を変えたりして藤井さんが選び抜いたのが、最終審査で持った花束をイメージした「最終審査ピンク」と春・夏の制服をイメージした「夏服ワンピース」の2色。
「何かがちがう」「こっちかな」と吟味した結果、納得いく色が見つかったようです。
なかなか楽しそうなワークショップでしたね・・・
藤井 楽しかったです!!「Kobe INK物語」のなかでも、自分のゆかりのある土地の色を使って、「花束」とか「プリンセスの制服」とか、思い入れのあるものの色を作れたのでよかったです。
清水 まさか、「花束」とか1色ではないものをインクにするとは思わなかったので、いいなと思いましたよ。
藤井 でも、それだけに、難しかったです。お花も、「画像ではこっちのインクの色が近い」けど、「自分の脳内イメージではこっちの色だし」って。あと、私算数が苦手なので、1滴ずつインクを足していった時、比率がだんだん分からなくなっていきました(笑)。
清水 私も、見てて「今、何滴目だっけ?!」と分からなくなりましたよ(笑)。
藤井 私、“オンリーワンの色”が好きで。レシピがない色というか、その時にしか出合えない色みたいなものが好きです。今、日記を書くのに使っているインクは東京の工房で買ったものなんですけど、その時限りの色の調合から選んだものです。
清水 へぇ。そうやって色にこだわるって、色が好きな人にしかわからない楽しみですね、きっと。色へのこだわりがあるのは、インクだけですか?
藤井 大学のゼミでも、色彩に関係ある研究をしていて。といっても、色の分析とかではなく、例えば、「恥ずかしい時には顔が赤くなるというけど、なぜ赤という色を使うか」といった研究です。
清水 なるほど。色っていってもそういう切り口の研究ですか。私は和の色とその名前にめっちゃ惹かれますね。「白群」とか名前も色も好きです。
花束は、5~6番目になってようやく選びに行けました
藤井 今日、インクで再現した「花束」には思い出があって。最終審査発表会の時に、10種類の花束を用意していただいて、候補者がひとつずつ選んでいきますよね。
清水 そう、そう。そうでした。先着順でしたよね。
藤井 私は、「あ、あのブーケがいいな」と思った花束があったのに、私、おどおどしちゃってなかなか行けなくて。確か最初に「私、これ選んでいいですか」って先陣切ったのは、乃晏さんだったんじゃないかと思うんですけど、次々に「私、これいいですか」「私、これで」ってブーケが選ばれていって、なんとか5~6番目に選べたのが、「いいな」と思っていた花束だったので、もう、ほっとしました。おかげで、その後も落ち着いて審査にのぞめた気がします。
清水 そんなことがあったんですね。私は、「なんか、最初に行ったらどう思われるんだろう」って考えて、多分3番目くらいに行きます(笑)。藤井さん、そういうタイプなんですね。
藤井 はい。私は、もともとは本当に人見知りで、審査の時もものすごく緊張しました。最初の書類選考の合格連絡をいただいた日は、うれし過ぎて、私ケーキを買って帰って、家族でお祝いしましたもん。最終審査へのぞむ時も、面接を経験したことがなかったので、YouTubeで過去の最終審査会の映像を全部見て、どんなことを聞かれるのか書き出して、自分なりに研究しました。
清水 す、すごい!
藤井 怖くて、怖くて・・・。特技披露では、長年やってきたダンスを披露しようと決めたんですが、最終審査の時はワンピースを着ることもあって、私が本来得意な種類のダンスは「ちょっと合わないかな」と、手の動きが多いワックダンスを選んで。当日の天気が雨予報だったので、アップテンポの明るい曲にして、裸足で踊りました。
清水 考えましたね。藤井さん、ダンスが得意なんですよね。
藤井 好きです、ダンス。3~4歳でバレエを習い始めて、中学高校の時にはダンス部の部長をやって、大学ではダンスサークルでいろいろ創作したりもしています。
清水 そうなんですね。運動神経がいいんですか?
藤井 そんなことはないです。走るのも遅いですし、球技もダメ。「ちょっと泳げるかな」くらいですが、でも車の運転は割と得意です(笑)。
プリンセスの活動をする上で、線は何本も必要なんやな
清水 プリンセスの活動のデビューはどういったお仕事でしたか。
藤井 「三田まちなみガーデンショー」の司会でした。プリンセスに選んでいただいてから受ける研修が終わって間もない頃だったので、制服の着方も「これでいいのかな」という感じで、とっても緊張しました。
清水 分かります。なりたての頃はなんだか感情が追いついてないですよね。
藤井 はい。でも、活動して、すごく変わりました、私。最初は人見知りで、ガッチガチだったんですけど、どんどん初対面の方ともお話できるようになっていって。さっき(インク調合ワークショップ)でも、同じ参加者の方とお話できましたし、「人生楽しくなったな」って感じます。だって、つんけんしているプリンセスなんて嫌じゃないですか。
清水 そうですね。私も「プリンセスの究極のお仕事は笑うことなんちゃうかな」って思ったりします。
藤井 でも、もう1回「花束を選べ」って言われても、やっぱり5~6番目に行くんだと思います(笑)。
清水 わはは。
藤井 部活でリーダーをしている頃は、人間関係の線は「自分と部員」の1本だけでしたが、「プリンセスの活動をする上では、線は何本も必要なんやな」って思います。例えば、司会だと「主催側と自分」「参加者と自分」。やっぱり、表彰される方の中にはご高齢の方もいらっしゃってステージに移動するのにも時間がかかったりするので、「とにかく時間通りに終わったらいいや」というものでもないと思います。
清水 そうですね。主催者の意図もありますけど、主役は表彰される方ですもんね。
藤井 なので、「ここは時間を取っても、ここで時間を巻けるかな」と考えて。そういういろいろな方向で考えられるようになったとも思いますし、事務局で動いてくださっている方がいることも学びました。
清水 なるほど。「プリンセスが3人いる意味」って、考えたことはありますか。
藤井 そうですね…。私が代表に選んでもらっていますけど、「3人一緒のところに居てたいな」と思います、3人の意見を大切にして。桃子さんも、いろいろな意見やアイデアを出してくれますし、乃晏さんは言わずもがな、しっかりしていますし。二人ともしゃべればしゃべるほど面白いですし、あの二人と一緒にできて良かったです。
どんなに疲れて帰ってきても「つづる」。
毎日の小さい楽しみを見つけられる
清水 藤井さん、日記をつけているんですよね。毎日欠かさず?
藤井 どんなに疲れて帰ってきても、絶対書くようにしています。もともとは母が日記をつけていたんですが、楽しかったり幸せだったりしたことも、どんどん忘れちゃうので、それを忘れたくなくて私も書くようになりました。
清水 へぇ、すごい!!
藤井 旅行とかに行くと、さすがにその日には書けないので、帰ってからまとめて書くんですが、1日目から振り返って書いていくと、もう1回旅行が楽しめます。書いてないと、「あ、書かな」ってなります。もうなくてはならん存在です。
清水 どんな感じで書いているんですか。
藤井 小さい頃はスケジュール帳に書いて、今は5年日記に書いています。よかったこともそうでないことも全部思ったことを書いているだけで。「ほんま、無理」「ぶーー」とかも(笑)。でも書いて、「ふ~っ」ってすっきりして寝ます。
清水 なるほど。きっと、そうやって、その時々の気持ちの記録ができますよね。
藤井 日記を書くようになって、人のいいところ探しができるようになりましたし、1日ゴロゴロしてるような日でも「テレビのこの人の発言が良かった」とか、小さい毎日の楽しみを見つけられるようになって、つまんない日がなくなりました。
清水 めっちゃいいですね。書くことそのものも好きなんですか?
藤井 好きです。小学校、中学校は決まって書記係でしたし、できるなら大学のレポートも手書きがいいくらいです(笑)。
清水 それは、よっぽど好きですね(笑)、でも、デジタルの時代だからこそ、手書きってよりいいなって思うことがあります。
藤井 そうですね。日記を書いていると、自分の筆跡さえも思い出になるなって思います。「この日、字、汚いから疲れてたんやな」とか、「ページがヨレヨレになっているのは悔し泣きしたからか」とか。「この時には、このインクにハマってたんやな」とか振り返ってみると面白いので、今日作ったインクも日記に登場するかもしれません。